記事:吉村真理子
先月の7月1日、子どもを描かせたらピカイチの林明子さんが81歳で亡くなられました。林さんの代表作「はじめてのおつかい」(福音館書店 1977年)は、もう50年近く読み継がれていますね・・・心からご冥福をお祈りいたします。

この度、皆さんにご紹介したい絵本は、『まいごのどんぐり』(松成真理子作・童心社 2002年)です。
*童心社様、掲載のご許可をいただき、誠にありがとうございます!
主人公のどんぐりは、コウくんのどんぐりです。おしりには「ケーキ」と書いてあります。コウくんがつけてくれた名前です。
コウくんはだいすきなケーキといっしょにかけっこをしたり、雨の日も元気にお散歩したり、一緒に泳いだり。本当になかよしでした。

でも秋のある日、「ケーキ」はまいごになってしまいます。コウくんは夕陽が沈んでも探し続けましたが、見つかりません。泣きながら帰って、次の日もその次の日もコウくんは探しにやってきます。ケーキは枯れ葉をはらいのけ、名前の書いてあるおしりを上にしてがんばりますが、見つけてもらうことができません。
そのうちにケーキの上には、雪が降り積もり、ぬくぬくの落ち葉の布団の中で眠りこんでしまい・・・。
やがてケーキはどんぐりの木になります。コウくんはランドセルを背負った小学生になり、自転車通学の中・高生になり、街の風景もどんどん変わり、ぐんぐん大きくなったケーキは真上の大空を見つめています。大空はどこまでも広がっていてコウくんのところまで続いているように思うからです。
ある日、大人になったコウくんがケーキのそばにやってきます。ケーキはビックリして、枝や葉っぱをざわざわゆすってどんぐりをたくさん落とします。それを拾ったコウくんはおしりをじっと見ています。もちろんケーキと書いてあるわけではありません。それでもゆっくり大きな木を見上げて「ケーキ?」と言いました。ケーキはうれしくなって、もっともっともっとたくさんのどんぐりを、地面にばらまきました。するとコウくんが笑いました。ケーキも笑いました。それからときどきコウくんはケーキのところに来て、一緒に空を見上げるのです。

最後のシーンは込みあげてくるものがあり、読み語りをすると、結びのことばの「うれしいことです うれしいことです」は思わず涙声になってしまいます。季節や時や風景が変わっていくなかで、コウくんを見守り想い続ける「ケーキ」の深い大きな愛情に心打たれ・・・成長していくなかでケーキを忘れてしまったかのように思えたコウくんの心のなかにずっとケーキとの思い出は存在し続けていたことがわかり・・・良かった! というしみじみとしたうれしさが胸に広がります。読んでもらった子どもたちが大きくなってから読み返すと、また違った感じ方ができるのではと思う絵本です。「大人のための絵本」とも言えるかもしれません。「いつもそこに居てくれる」ことがどんなにありがたいことか・・・考えさせられます。
2021年に初孫が生まれ、名前が「こうき」なので「コウくん」と呼んでいます。その時、まだ小さい「コウくん」にプレゼントした絵本でもあります。
作者が松成真理子さんで、私は同じ名前なので勝手にご縁も感じています。
ウチの「コウくん」も、どんぐりが大好きで、彼のポケットにはよく入っているんですよ(笑)。
最後に・・・ケーキはどうして「ケーキ」という名前なのでしょうか?
まだ読んだことがない方は、是非手に取ってみてくださいね。
