絵本の絵を見るたのしみ

記事:古橋 和夫

 絵本は、絵を見る(読む)ことがたいせつだといわれます。

 そのことを教えられた絵本がありました。『てぶくろ』(ウクライナ民話、ラチョフ絵、内田莉莎子訳、福音館書店)です。

 森のなかで、おじいさんが、てぶくろを落とします。そこへ、くいしんぼねずみ、ぴょんぴょんがえる、はやあしうさぎ、おしゃれぎつね、はいいろおおかみ、きばもちいのしし、のっそりぐまがやってきて、「てぶくろ」の家に住みついていくという、みなさん、よくご存知のおはなしです。

 つぎつぎに現れてくる人物への興味、「てぶくろ」の家に入れるのかどうかという期待と不安、ページをめくってみると、みんな「てぶくろ」の家にすっぽりとはいっている驚きとおかしみがあります。

 画家のラチョフは、あたらしい人物が登場するたびに、てぶくろがだんだん動物たちの住み家になっていく様子を表現しています。床下をあげたり、はしごや扉をつけたり、バルコニーを築いたり、窓をつけたりしています。煙突からは煙まででています。部屋ではストーブが焚かれているのです。「てぶくろ」の家がだんだん小綺麗になっていく様子、生活が築きあげられていく様子が、絵によって表現されています。それは文章にはないことでした。

 また、人物たちは、民族性豊かな衣装を着ていて、性格や社会階層まで表現されています。彼らは、「てぶくろ」の家で出会う前は、森のなかでばらばらの人生を送っていたことでしょう。このような人物が「てぶくろ」の家で一緒に暮らしはじめるのです。「てぶくろ」の家は、ひとつの社会を象徴しています。

 また、『おおきなかぶ』(ロシア民話/A.トルストイ再話、内田莉莎子訳、佐藤忠良画、福音館書店)にも、面白い絵があります。ねずみが来て、かぶを抜く場面です。絵をよく見ますと、かぶが斜めになり、今にも抜けそうになっています。前の場面の絵とは対照的です。力が弱いと思われているねずみが来て、おおきなかぶが抜けるということを絵が表現しています。

絵が、絵本の世界のイメージを広げ意味を深めています。絵本の絵を見ることは、絵本の読む楽しみのひとつです。

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